ブカブカのスニーカーに後悔させた件
10年以上前、アウトレットモールでクラークスのパチもんみたいなグラビスのスニーカーを買った。とにかく値段が安かった。それが魅力だった。
サイズがなくて2サイズほど大きいモノだったが、ソールを突っ込んだりして無理やり履いて、自分の足にスニーカーを合わせてやった。
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それから毎日、同じスニーカーを履いた。雨の日も風の日も、勝手に私物が入れられた段ボールを渡されて会社をクビになった日も同じスニーカーを履いていた。
結婚した日も同じスニーカー。新居に引っ越した日も、子供が産まれそうになって病院に走った日も同じスニーカーだった。
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いつしか、スニーカーはワタクシの体の一部となった。靴紐は4年ほどして切れてしまったが、スペアの色違いの紐で乗り切った。
酷使され続けたスニーカーは7年が過ぎる頃、見るも無残な状態になった。だが、ワタクシはスニーカーに引退を許さなかった。
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8年目を迎えた頃、ワタクシは無職だった。スニーカーは志村けんがコントで履くホームレスの靴状態になった。
嫁にあまりにもみすぼらしいので新しいのを買ってくれ!と懇願された。”ボロは着てても心は錦”ワタクシの心は豊かであったが、さすがにスニーカーが可哀そうになってきたので引退させてあげることにした。
ゴミ袋にスニーカーを突っ込んだ時、「これでやっとクツろげる」とスニーカーが言っているような気がした。
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嫁から小遣いを渡されたワタクシはネットで同じスニーカーを探した。だが、すでに廃版になっていた。仕方ないのでバージョンがアップしたほとんど同じグラビスのスニーカーをポチった。
また8年後に同じ過ちを繰り返さないため、今度は同じモノを2足買っておいた。これで、あと16年は同じスニーカーで生きていける。ワタクシに買われたことをスニーカーが後悔するまで履き続けるつもりだ。
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今週のお題「お気に入りのスニーカー」