母の日に嫁がブチギレた件
第二次ポエニ戦争。紀元前219年から約20年におよぶ共和制ローマとカルタゴの間に起こった戦争である。
カルタゴの英雄ハンニバルは、カンネーの戦いにおいて5万人のカルタゴ軍を率いて、7万人のローマ軍を包囲殲滅する。歴史上、包囲戦のお手本とされる戦いである。
こう言えば聞こえはいいのだが、包囲された方は逃げ場がなくもみくちゃにされ、真ん中の方で圧死するという悲惨なことになるのでたまったもんじゃない。
アンニョイな母の日。愛妻家のワタクシは、嫁の機嫌を取ろうと助手の娘氏を率いて靴箱に戦いを挑むことにした。ただ掃除をするだけなんだけど。
靴箱から一旦、すべての靴を外に出し棚を雑巾で拭いて、ついでに、玄関土間をブラシでゴシゴシ。玄関ドアもキレイに拭いてと、ワタクシはやるからには、ハンニバル並みに徹底的にやる男である。
水で汚れもネコの毛も洗い流し、雑巾で水気を拭いて一段落したので、アルプス山脈を越えたハンニバルの気持ちになって一休み。その後に、恐ろしいことが待っていようとは、この時知る由もなかった。
小休止を終えて、娘隊員にクツの数を数えるように指示。
と遊んでいたその時であった。近くの部屋で昼寝をしていた嫁が、ブチ切れながら玄関にやってきた。
突然のパターン赤、ブチギレです。10段階の9までキレた暴走モード。
一体、ナニが起こったのだろうか?ワタクシは、嫁がたくさんクツを持っていることに対して、なんら非難した覚えはない。女性のオシャレへの執着心を否定するほどヤボな男でもない。
そりゃ、同じような黒い靴ばかりで誰も違いがわかんねーんじゃねーの?とか、この履いてるとこ見たこともないフェラガモのちょっと金属部分がサビた靴いるの?とか思いはするが口には出さない。
ただ、数年前にアウトレットで買ったUGGのモゲモゲのついたブーツをほったらかしにしてるけど、虫が湧くんじゃねーか?と心配する程度である。
とにかく、怒り狂った嫁から逃げるように娘氏と公園へ退避するのがやっとであった。そして、公園で一息ついたワタクシは尊敬するD・カーネギー先生の名著「人を動かす」を開くことにした。
相手の心が憎悪に満ちているときは、いかに理をつくしても説得することはできない。子供を叱る親、権力をふりまわす雇い主や夫、口やかましい妻―こういった人たちは、人間は自分の心を変えたがらないということをよく心得ておくべきだ。
「人を動かす」196ページより引用
なるほど。退避して正解だったようだ。先生は、だから逃げろと言っているワケではなく、おだやかに話そうね!と指導しているのだが。
今回、ワタクシはどこで嫁の地雷を踏んだのか、正直よくわからない。嫁にとっては人権を蹂躙されたくらいの怒りに触れるポイントがあったのだろう。それは、それであってしかるべきだろう。
ただ、ブチギレたことにより嫁はたくさんのモノを失った。
- 母の日のお祝いに買ってこようと思っていたショートケーキと高級ワイン
- 作ろうと思っていたスペシャルディナーのチキン
- 娘氏と渡そうと思っていたカーネーションの花束
- 家族の団らん etc…
公園に便所サンダルで着の身着のまま逃げてきたワタクシに、すべてを用意する気力はすでになくなっていた。
母の日にカーネーションの一本ももらえなかったと文句を言っているそこの奥サマに、胸に手を当ててよく考えてもらいたい。
毎日、怒りに任せてキレまくって損をしていませんか?
キレたところで相手の気持ちは決して変わらない。それどころか、必ず自分が損をする。思い当たる方は、ご自身の行動をよく見直そう。これを読んでまたキレて、コメント欄に嫌みの一つでも書こうとしているあなたのことですよ!
第二次ポエニ戦争で何度も勝利したハンニバル率いるカルタゴであったが、その後、ローマの執拗な抵抗に遭い、持久戦に持ち込まれ最後には、滅亡への道を辿ることになる。
歴史を振り返るといつの時代もキレてケンカを吹っ掛けた方が、最後には負けるのである。だからキレてはいけない。キレられて混乱したら圧死する。
たとえケンカになったとしても、勝ち過ぎず、負け過ぎず、お互いに根に持たれない程度のところで講和するのが一番良い結果を生むのだ。ローマ軍に徹底的に破壊されたカルタゴの遺跡を眺めて心穏やかに生きよう。おっぱい揉みたい。
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