字画判断を滅ぼさず国語能力で殴った件
ワタクシの名前には致命的な欠点がある。ペンネームのマスヲではなくて、ホントの名前が珍しい名前で漢字が普通に読めない。未だに自分と同じ名前の人に出会ったことがない。漢字だけ同じというパターンもない。
これだけならまだよかった。一番困るのは、フルネームで名前を読むと”噛む”のだ。先日、人間ドックにいった時も10回くらい名前を呼ばれて、8回くらい噛まれた。
たまに自分でも噛みそうになるので怒ったりしないが、つまり苗字と名前の音がカブってて噛みやすいのだ。この呪縛だけは息子氏には引き継がせたくない。
さて、アンニョイな我が家に家族が増えた。ワタクシが仕事に使っていた部屋は、嫁とおっぱい吸うマンに占拠され居場所がなくなってしまった。
お七夜を過ぎたがおっぱい吸うマンこと、息子氏の名前もまだ決まらない。というのも、お約束で嫁がキラキラネームを付けようとして譲らず論争が続いているのである。
が、今回は娘氏の時の反省を踏まえ、かつ名著「人を動かす」で1年以上ブログを綴りながら深層学習を繰り返した成果を発揮して、まだ嫁にキレられていない。
手順としては、まず嫁の意見を全面的に肯定する。決して否定しない。コレが最も重要である。ちなみに、嫁は流行の、カッコイイ、珍しい、娘氏の名前ともつながりがあり、中性的で、字画のいい名前にしたいらしい。
ムリである。
そして、嫁が自ら提案してきた案は、アナゴみたいな珍妙な名前だった。なぜ普通にマスオとかカツオみたいな名前にしたくないのだろうか?意味がわからない。
が、否定はしない。「もっと、よくできそうだね!」と思ってもいない発言をして、肯定的に話を進める。
嫁から出された案を元にワタクシの修正作業が始まる。息子氏が社会に出ても、苦労しないで済む普通の名前を付けてあげるのだ。
そんなこんなで、嫁案を修正してまぁまぁ普通の名前を考えた。そして、一応自分のトーチャンとカーチャンにこんな感じどうかな?と相談してみた。
しかし、ここからが地獄であった。いつもなら、同居しているBBA(姑)が問題を起こすのだが、今回のジョーカーはウチのカーチャンであった。
というのも、カーチャンは姓名判断が大好きというか信仰していて、字画や漢字に滅茶苦茶ウルサイのだ。これでは、先日、増田ことはてな匿名ダイアリーで話題になってた話そのものだ。
ちなみにワタクシは、字画判断をまったく信じていない。名前に最高の画数を持つハズのワタクシの人生は、謎の反転、暗転、びっくり仰天を繰り返してパッとしない。おかしい。
そもそも、カーチャンの信仰している流派は旧字の字画でカウントするらしい。他の流派では新字体そのままでカウントする流派もあるので、それだけで意味不明である。もはや宗教なのだが、ウチのトーチャンもカーチャンもニーチャンもワイも新興宗教の信者である。もう宗教は間に合っている。
元々、信心深い家系なのだろうか?いや、ワタクシは入信している新興宗教すら信じていないのだが。
とにかく、ワタクシが提案した名前の字画や漢字の意味が悪いだの文句を言ってくる。相手は信仰心を盾にするので、論理的に攻められないのがやっかいだ。
想像できない方のために、どのようなやり取りになるのかワタクシとカーチャンの通信記録を開示しておく。
※名前に”久”という字の入る漢字を考えた場合↓
こんな感じで、考えた名前を全否定されていく地獄。ちなみに、カンペキに吉数になる字画はもちろんのこと、カーチャンが他にも言い出したことを挙げると、
- 鳥の漢字は入れるな(理由:お空に飛んでいくから)
- 空・風・翔みたない漢字(理由:同上)
- 花の漢字(理由:すぐ枯れるから)
- 男女の区別がつかない名前
- 兄妹で同じ漢字を使うな...etc
そして、その名前で早死にした人や、不幸になった人の話を始める始末。
ワタクシがあきれ果てて通信を遮断しようとすると、頼みもしていないのに”降りる”と言い出す↓。
こんなやり取りをしばらく続け、困り果てたワタクシはまたしても信仰しているD・カーネギー先生の名著「人を動かす」に救いを求めた。
”相手の意見をよく考えてみる約束をし、その約束を実行せよ”-相手のほうが正しいかも知れない。自分のいいぶんを通すのに急なあまり、あとになって「あのときいったのに、こちらのいうことを聞こうとしなかったではないか」などどいわれる破目になるより、はじめに相手の主張をよく考えてみる約束をしたほうが、はるかに事は簡単だ。
「人を動かす」165ページより引用
なるほど。 そもそもワイの名付けを失敗してるじゃないか!とかツッコミを入れても何も始まらないということなのだ。
相手はカーチャンなので、性格はよく理解している。完全に字画を吉数にしないと死ぬまで文句を言われかねない。お宮参りのスポンサーにもなってもらわないと、お産の入院費でこっちはカツカツなのだ。
そんなこんなで、ワタクシの格闘が始まった。名付け本5冊と漢和辞典を広げて格闘すること1週間。不可能に思われた作業は、毎日、つまらないダジャレを考えているワタクシの国語能力の勝利となった。
つまり字画も漢字の意味もカンペキな”滿壽夫(ますを)”という感じの名前を捻りだし、カーチャンにスバラシイとまで言わしめた。もちろん、字画だけでなくワタクシの想いも込めたものになっている。
ちなみに、最後まで残った”玩男(ほびを)”という名前は、ツイッターに放出したので誰かが使ってくれるだろう。
息子氏の名前ですが、玩男(ほびを)に決めようかと思うのですがご意見ください。
— マスヲ@地球に産まれてよかった (@move_wife) 2017年7月18日
ここまで来て嫁に「こんなん出ましたけど~」とスバラシイ名前を報告。案の定、嫁は気に食わないと拒否。しかし、読み方を音読みで女の子のような読みにすればいいとの由。
ワタクシは全否定を喰らうと思っていたのだが、やはり、捻り出した名前の”据わり”※がスバラシかったので案外気に入ってくれたようだ。が、普通に読めるものをわざわざ性別不明のキラキラに読む意味がわからない。
※据わりのイメージが付かない方は、このブログのトップを確認あれ。ブログ名が据わっているのがおわかり頂けるかと。
もし、息子氏が毛むくじゃらの熊男みたいな男になった時に、女の子みたいな名前では笑われると主張したのだが、話し合いは平行線を辿る。
ここでワタクシは、意を決し、読めない名前をつけられたある男の話を始めた。
変な呼び方をされて人を憎むようになる。修学旅行でお土産物屋に友達の”タケシ”とか”ヒロシ”と名前の入ったキーホルダーはあるのに、自分のがいくら探してもない。人間ドックで名前を8回噛まれる。
だが、開き直って息子にだけは、普通の名前を付けてあげようと心に誓う優しい男の話である。名前は親の希望で付けるものではない。ましてやジジババのエゴで決めるものでもない。子供が自分の名前として大切にできるものをみんなで選んであげるだけなのだ。
ある男の苦難に満ちた人生を静かに聞いていた嫁は、最後には、今風ではないが普通の読み方のワタクシの主張する名前で納得してくれた。
そういえば、こんななぞなぞがある。
「自分の物なのに人にばかり使われるものってなぁーんだ?」
周りの人からたくさん使って呼んでもらえる名前になってほしい。